月草雑記帳

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竹華


竹華「復讐」超えた


かけたー!!
拍手ぱちぱちありがとうございます!!


ぎりぎりになりましたが昨日の続編できました!
角笛山シリーズ。捏造度半端ない!


そして、昨日の記事(竹華「復讐」『時を)を読んでいない人はここでお別れだ!










ーーーーーー
『時を はもうとっくにお気づきでしょうが榊原ヒロの父親視点のお話です。
そして「先輩」は言わずもがな…(と信じたい)。我ながらうまいことこじつけたものだなあと感心してたりします。
今日は別視点からのお話。ようやくリクエストに近づけたかな?
それでは、興味のある方のみどうぞ。




「復讐」超えた


「榊原。」
 呼ばれた声に顔を上げると、渋い顔をした黒い喪服の男性がひとり、私を見ていた。
「…日下部。」
「この度は…なんと言葉をかけてよいのか…」
 口ごもる日下部に私は首を振る。
「私も、何がなにやらわからぬうちに此処まで来てしまったような…」
 視線の先にあるのは、まだ若い男女の写真。私の息子夫婦の、遺影だ。
「…儂も妻に先立たれた時には、そのような心地がしたものだ…あの時は」
「じーちゃ!」
 日下部の言葉を遮り駆け寄って来たのは、幼い子供、私の孫だ。
「おお、もしやヒロか?」
 名前を呼ばれ、ヒロはきょとんと日下部を見る。
「生まれた時に会ったきりだが…もう4つか。大きくなったものだ。」
「じーちゃ、誰?」
「じいちゃんの友達の、日下部だ。ヒロ、ご挨拶を。」
「…こんにちは。」
「ああ、こんにちは。」
「ねーえ、じーちゃ、パパとママ、まだ帰ってこないの?」
 服の裾にまとわりつく子供を抱き上げて、遺影を見る。
「ああ…。」
「…榊原。殿からの、文書を持ってきた。」
「…殿、からの?」
「ああ。葬儀に出席できなくて申し訳ない、と。」
「じーちゃ、殿ってだれ?」
 日下部が黙ってこちらを見る。私はヒロを日下部に預けた。
「しばらく頼んでも?」
「ああ。ヒロ、こちらで少し待つとするか。」
「?うん。」
 ヒロを抱き上げた日下部がその場を去ったのを確認して、私は文書を開いた。


 文書には達筆な筆文字で、簡潔に言葉が綴られていた。
 悔みの言葉。
 出席できないという謝罪の言葉。
 幼い子供がいて大変だろうが、心を折らないでほしいという言葉。
 そんな言葉が散らされたその手紙の文字はとても大人びていた。
「…今、幾つになるんだったか…」
 元々志葉の本家とはあまり親しくしていない私には、殿さまの本名も、年齢も、勿論容姿もわからない。
 古くからの友人である日下部がお仕えしているということで多少親近感はわくことはあるものの、息子夫婦を失った悲しみは果てしない。
 慰められるものか。
「お前達も、読むか?」
 息子夫婦の遺影の前にそれを置く。
 息子夫婦は志葉の本家と多少は…少なくとも私以上には親しくしていたはずだ。
 殿様からの文書はきっと、喜んだであろう。
 文書を遺影の前から取り去り、仏壇の引き出しにしまおうとして…手を止めた。
 そこにあったのは、赤い一枚のディスク。
 息子夫婦の亡骸と共に見つかった、この山に眠る「猛牛」を封じるための…否。
 利用する為のディスク、使いこなす為のディスクだと、息子は嬉しそうに言っていた。
 ヒロの為に作ったと。ヒロのその天性の力の為に、このディスクはあるのだと語っていたのが嘘のようだ。
「…こんな物の為に…」
 壊してしまいたい衝動をこらえる。これは、息子の最後の夢。
 だが、ヒロにこれを知らせるつもりはなかった。
 渡すつもりは無かった。
 これ以上、「猛牛」の所為で大切な人間を…失うわけにはいかない。
 私はディスクの上に文書を重ね、そっと引き出しを閉じた。


「日下部。」
 庭へと出ると、ヒロと日下部がボール遊びをしていた。
「おお。もう、良いのか。」
「ああ。みっともないところを見せた。」
「何。ほらヒロ、もっと強く投げてみせい。」
「えいっ!」
 ヒロの投げたボールがてんてん、と転がる。
「そうだ、うまいぞ。」
 娘夫婦を育て上げただけあって、日下部は子どもの扱いがうまい。それに対して私は…一緒に暮らしていたとはいっても、仕事しかしていない。
「…榊原。あまり不安そうな顔を見せるな。」
 顔を上げると日下部がじっとこちらを見ている。
「ヒロが心配する。」
 その言葉どおり、ヒロはとても不安そうな顔でこちらを見ていた。
「じーちゃ、どうしたの?」
「なんでもないぞ。」
「ねえじーちゃ。パパとママ、いつ帰って来るの?」
 もう何度聞いたか、何度はぐらかしたかわからない問いに胸が詰まる。
 『もう二度と帰ってこない。』
 そう、たった一言―――
「ヒロ。…父さんと母さんはなぁ…先にいってしまったんだよ。」
 やっと言えたその言葉に涙が混じる。
「どこに?いつ帰って来るの?」
「帰って来る必要は無い。じいちゃんやヒロもそのうちいくからな。」
 ヒロの顔が泣きそうに歪む。
「おお、そうだ、忘れておった。」
 少し芝居がかった動きで日下部が懐から紙を取り出した。
「ヒロ、これはお前にだ。」
「…なぁに?」
 日下部が屈んでヒロに紙を手渡す。
「殿からの贈り物だ。」
「とのって、誰?」
「殿は、数年前に母を、その数ヵ月後に父を亡くした人だ。」
 言葉が難しくてわからなかったのだろう。ヒロの頭上にハテナが飛ぶ。
「それでも殿はお泣きにならなかった。今も、強く生きておられる。」
 ぽん、と日下部の手がヒロの頭を撫でる。
「お前も、しかと生きろ。おじいちゃんの為にもな。」
「…うん。」
 意味がわからないなりにも、ヒロは一生懸命頷いた。
「うむ。それでこそ角笛山の子だ。儂も、幼い自分にはよく遊んだものよ。なあ、榊原。」
「ああ…。…日下部。」
「ん?」
 涙を封じ、私はヒロを抱き上げた。
「今日は、助かった。恩に着る。」
「なに、礼には及ばぬ。殿のご命令だ。」
「殿様か…いつかお会いしたいものだな。」
「ああ。」
 老人二人に挟まれて、幼い孫がきゃらきゃらと笑う。
 その孫の手に握られていたのは、小さな紙飛行機だった。

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