月草雑記帳

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百年文庫大作戦


百年文庫大作戦「秋」


こんばんはリオンです。
予想以上に反応をいただけて嬉しかったです「百年文庫大作戦」。
達成できそうだったらリア友を誘おうと思います。覚悟しとけよ!


さて、今度は百年文庫4、「秋」をテーマにお届けします。
まずは一言感想。


「流行感冒」志賀直哉
 子どもを育てるってきっとこんな感じだよなあ…としみじみしてしまった。この夫婦の心配もわかるし、周りの「そこまでしなくても」も…わかるなあ。


「置き土産」正岡容
 ハラハラしたよ…主人公がどうなっちゃうのかとハラハラしたよ…しかしなかなか意外な話だったな猫…


「秋日和」里見
 視点がころころ変わるのが面白かった。アヤちゃん視点が欲しかったなあ!!よみたかったなあ!


今回思ったことは、「秋」と「死」は近いんだなってことです。家族のきずなも深まる気節なのかもしれません。
さて、今回もオリジナルの短文を一個置いときます。この主人公、私の言いたい事をかーなーり言ってくれてます。ほぼ私かも…?
勿論、フィクションではありますが。では、興味のある方のみどうぞです。



「秋の色は」


 その人と別れたのは、綺麗な青空の下だった。
 病院の窓からぼんやりと外を見ていた、ようにみえた。あの時彼女は、一体何をみていたのだろう。


「何を見ているの?」
 そう尋ねた私に、彼女は何も言わなかった。
 私も、彼女が何も言わないのをわかっていた。もう何日も何日も何も食べていない。何も飲んでいない。腕から伸びる透明な管から送られる栄養だけが、彼女をこの世界にとどめているのだと、十分承知していた。
 もうすぐこの人は逝くのだろうと、ぼんやり考える。不謹慎かもしれないが、それは紛れもない事実であり…この後もしばらくはこの世界にお世話になるつもりである私にとって、未来を考えることは大事なことであった。
「今年はねえ、十年に一度の紅葉らしいよ」
 新聞で見た知識を口にする。どうせ紅葉の持ち主辺りが取材に舞い上がって適当に口走ったんだろうとは思うけれども、それでも確かに今年の紅葉はとびきり美しいように思えた。
「ねえ、桜の紅葉って好き?私は好きなんだぁ。モミジとかイチョウはさ、木の全部が赤色とか黄色とか、同じ色になってる時が一等好きなんだけど。上から下まで同じ色でさ、風が吹いたらその色が散るの。ぞくぞくする光景だと思うわ」
 ハンドクリームの蓋を開けて、指で白いクリームをすくう。このクリームは薬独特の嫌な匂いがするし塗った後は手がべたべたするので、私はあまり好きではなかった。
「でもね、桜は違うんだ。桜は上から下まで同じ色じゃイヤだな。上の方が赤くて、だんだん黄色くて、下の方が緑なの。あれが一番素敵。あの赤色、何色っていうんだろうねぇ?知ってる?私、最近ずっと色の名前考えてたんだけど、わかんなくて。夕日の色、も、ちょっと違うんだよね。夕日にクリーム色を混ぜたような…とりあえず、なんかクリームが入ってるのは間違いないと思うんだけど。何色っていうのかなあ?知ってる?」
 ハンドクリームを彼女の足に塗りながら、答えを求めない問いかけを続ける。そういえばハンドクリームを足に塗ってもいいんだろうか。今更な疑問が頭をよぎったが、まあいいかと作業を続けた。
「花と言えば桜って言うけどさ、私は桜の花より紅葉が好きだなあ。花はなんか、怖い感じがするし、頭の中の『桜色』より白いんだよね、実際の桜」
 ウエットティッシュで手についたハンドクリームをふき取る。まだべたべたした感触が手に残っていたが、気にせずティッシュをごみ箱に放り捨てた。
「じゃあ、また来るね。明日。できたらお土産に桜の葉っぱ、持ってくる」
 彼女の顔を覗き込む。目と目があって、彼女が小さく手を挙げた気がした。


「何を見ているの?」
 そう問いかけられて、私は現実に引き戻された。
「桜」
「桜?…ああ、この木、桜なんだ。そういえばここ、春には綺麗だもんね」
「私は春より秋の桜の方が好きかな」
「へえ。変わってるね」
「そうでもないよ。…あ、そういえばさ、この葉っぱの色、何色かわかる?」
「んー…そうだな…秋色?」
 そのとぼけた反応に思わず噴き出した。
「んー…いや違うか…見てて『飽き』ないもんな…」
 その真剣な顔と言葉の内容に、もう一度噴き出す。
「笑うなよ…」
「ごめんごめん」
 そう言いながらも、私は今日も桜の紅葉を拾う。
「今日も行くんだ?」
「そ。持っていくって約束したからね」
 そういって手を振った私を、彼が口に手を添えて呼び止める。
「なあ!その色の名前、考えたんだけど!」
「何!?」
 顔を葉っぱと同じ色に染めて、彼は耳元で小さく笑う。
「恋の色って、どう?」
 その答えにまた噴き出して、私は空を見あげる
 いい天気だ。青い青い、秋の空。
 青空と恋色の葉っぱの向こうで、彼女が小さく手を挙げたのが見えた気がした。
 ずっと昔に元気だったころ、私と逢う時、別れる時。
 いつもそうしていたそのままに。
 胸のところで小さく手をあげる。瞳は愛しさに溢れている。
 私もいつもと同じように、大きく大きく手を挙げた。

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