月草雑記帳

百年文庫大作戦


百年文庫大作戦「昏」


「昏」。正直読めませんでした。「くれ」とか「こん」って読むんですね。
意味としては「くらい」とか「ひがくれる」とか「くらむ」らしいです。うん、なんかそんな感じしました。
実は先に「月」を読み終わってるんですがあとちょこっとが書き終わってないのとなんか時期的にもうちょっと待ったほうがよさそうなのでこっちを先に載せてみます。


では、ちょこっと感想
「舞扇」北條誠
 なんというのか…「新しい」と「古い」の融合って難しいんですね。正直良く分からなかったと言うところが…(え

「きのうの今日」久保田万太郎
まさに衝撃の結末。どうなるんだよあの店…どうなるんだよ!?

「レストラン洛陽」佐多稲子
落ちぶれて行くっていうかなんというか。「生きる」ってどういうことか考えさせられる。


今回はアレかなあ。「落ちぶれる」とか「誇り」とかがテーマな感じかなあ。難しそうだ。
全体的に意味がよくわからないっていうか「読めない」感じもするような…うん、わからなくなってきた(笑)。
というわけでよくわからないの書きました。書いてるうちに「あーそういうことだったんだ」と思いましたね、ええ。
タイトルはストレートどまんなかにしておいたよ!



「黄昏色の指輪」


「それを手放せば、もっと楽に生きられるんじゃない?」
 誰にそう言われても、その人は静かに微笑み首を振った。
「指輪貧乏」と陰で呼ばれていることに気づきながら、彼女は毎日その指輪を左の中指にはめた。
 生活はギリギリで幾つものバイトを掛け持ちする日々。親なし配偶者なし学歴なし職歴なしの彼女が就くのはいつも安い賃金の肉体労働だったが、それでも彼女は指輪をその身から放さなかった。水仕事などでどうしても指輪ができないときは、ビニール紐で輪っかを作り、それに指輪を通して首から下げた。
 綺麗な指輪が貧乏くさい紐にかかっている姿は誰が見てもアンバランスで、若い女はそれを見て「自分ならもっと美しく指輪を着けてみせる」とため息をつき、若い男はそれを見て「自分の愛する人が着ければどんなにか素敵だろう」と嘆いた。
 髪を染めるお金もなく、暇もなく、白髪が混じったパサパサの黒髪を自分で適当に切りそろえた彼女は、そんな視線を気にすることなく指輪を着け続けた。それが彼女自身の存在証明であると言うかのように。


 その指輪は、シンプルに見えた。
 それはひとつの大きな―――そう、大人の男性の親指の半分ほどの大きさの―――大きな石が中心となっていた。
 そしてその周りを小粒な、しかし良質なダイアモンドが飾っていた。
 ダイアモンドはよく見るとさまざまな色をしている。ブルー、ピンク、イエロー。カラーダイアモンドと呼ばれるそれと透明なダイアモンドがバランスよく石を取り囲み、台座にちりばめられている。
 台座自体はシルバーでできており、その石をまた引き立てている。滑らかで白色に近い銀をしたその台座と、そこに星のように埋め込まれたダイアモンドだけで、指輪が上質なものであるとわかる。
 そして、石である。
 石はすでに記したとおり、大きなものである。
 宝石に限ったことではないが、宝石は大きいほど価値が高い。そして、見ていて楽しい。
 その宝石は表面はつるりとしている。しかしすべてを拒絶するような冷たさはなく、むしろそっと手に触れると吸い付くように暖かく自らを受け入れてくれるのではないだろうかと思わせるような、そんなつるりとした手触りだ。
 その暖かさには色も関わっているかもしれない。
 その色は赤のような茶色のような黄色のようなオレンジのような、光の加減でさまざまに微妙に色を変えるものだった。
 そしてその色は奥まで透き通るように見え、また同時に最深はやはり色に遮られて触れることのできない神秘性を秘めていた。
 彼女はこの色を、「黄昏色」と呼んでいた。
 黄昏色の指輪は、いつも彼女とともにあった。彼女が今までどのような人生を歩んできたのかを知る者は彼女の周りにいない。
 ただ、常にその指輪とともにあるのだろうと、誰もがぼんやり思っていた。


 その時は突然訪れた。
 彼女が働いていた職場から火が出たのだ。そこは印刷所で紙が多く、しかも古い民家を改造していたため木造建築で、火の回りが早かった。
 彼女は同僚たちとともに慌てて外へと避難した。そしてその時、何の因果か、首にさげていたビニール紐が切れたのだ。
 彼女たちがそのことに気が付いたのは、燃えるオフィスを呆然と見ているときだった。
 同僚に指摘され、彼女は何も言わなかった。
 不意に、よい匂いがした。
 お香のような不思議に心落ち着くその香りは、火事現場全体に広がった。
 何が燃えている匂いだろうと首を傾げる同僚たちの隣で、彼女は一筋だけ涙を流した。


 辺りがすっかり燃え落ちて、夕日が半分以上沈んだ後、同僚が彼女に「指輪を探す?」と尋ねた。
 彼女は静かに首を振り、柔らかい、落ち着いたまなざしで答えた。
「これで、供養になったから」
 そのまなざしは、黄昏に吸い込まれて見えなかった。


 たそがれどきは誰そ彼。
 あなたはいったいだれですか?
 暮れの光にたたずむあなたが、誰なのかがわからないのです。
 誰、彼は?
 誰、彼は?
 知りたい知りたいと願うのですが、夕陽がまぶしくてわからないのです。
 わからないのです。

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