月草雑記帳

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伝謳交響曲


第二楽章「譲れない想い」3話


頑張って更新するぞ!と意気込んではいましたがもう二月が終わったっていうのはどういうことですか。


閑話休題。
オリジナルキャラクターがいっぱい出てくるので、誰かついてきてくれるのだろうかと不安になってきております。
なるべく濃くなってもらう…か、もしくはいなくても大丈夫になってもらうので!ダメか。
とりあえず、ちょっとおつきあいくだされば幸いです。そのうち登場人物紹介でも作るか~


第二楽章は侑斗と愛理さん編です。
オリジナルキャラクターがバシバシ出張ってきて若干困ってますが、侑斗&愛理さん編なんです!
「大丈夫ですか?」というコメントまでいただいてしまいましたが大丈夫…だと思います多分。
1話は「侑斗の進路」、2話は「愛理さんの進路」というテーマで書いてみましたが、今日は3話です。
ゆっくりゆっくり進めていこうと思いますので、よろしければおつきあいくださいませ。






「譲れない想い」3話


 『改装のため、しばらくお休みさせていただきます』
「これで良し、と…」
「野上」
 良太郎が振り返ると、大きめの手提げ鞄を持った侑斗が歩いてくるのが見えた。
「侑斗」
 店の前まで来ると、侑斗は良太郎が貼ったばかりの貼り紙をじっと見た。
「なんだか久しぶり、侑斗」
「ああ。…店、どうなんだ?」
「いよいよ改装に入るよ。直前までいろいろ図案とか考えてたけど、満足いく間取りになったみたい」
「みたいって…お前も住むんだろ?」
「一応そのつもり。一階が店と物置で、二階は姉さんと僕の部屋になる予定だから」
「そうか」
「また借金だらけでマイナスからのスタートねって姉さんは笑ってたよ」
「…なんか手伝うか?」
「業者さんに任せておけばいいんじゃない?」
 さらりと言い切る良太郎に、侑斗は何か言いたげにしていたが、やがて諦めたかのように視線を落とした。
「あ、でも」
 良太郎がポケットから財布を取り出す。中に入っていた一枚の小さな紙切れを、侑斗に差し出した。
「姉さんが修行してる喫茶店には、たまには行ってきなよ」
「修行?」
「うん。昔、店ができる前にアルバイトしていたところでね。父さんのお弟子さんがマスターなんだよ。これ、その店の名前と地図」
 侑斗が紙切れを受け取る。そこには『香緋屋』という文字と簡単な地図が記されていた。
「なんて読むんだ、ここ」
「そのまんま、『こーひーや』っていうんだ。そんなに遠くないよ」
「…わかった」
「じゃあ、僕用事があるから。あ、姉さんなら中にいるけど」
「…店はもう開いてないんだろ。だったら帰る」
 そういうと侑斗はさっさと踵を返す。その背中を見て、良太郎は小さくため息をついた。


 からんからん、と軽い鐘が鳴る。
 カウンターの向こうで顔を上げた人と、目があった。
「あら、桜井君」
 こんにちは、と小さく返した侑斗に、愛理はカウンターを勧めた。
「どうしてここへ?」
「野上に聞いた」
「そう。ご注文は?」
「…任せる」
 じゃあブレンドね、と愛理は青色のエプロンを翻し、カウンターの奥へと向かった。
 そこは小さな喫茶店だった。
 全体的に白と茶色でまとめられたデザインで、やわらかく磨かれたテーブルや椅子が優しい印象を与える。ミルクディッパーとは違い、歴史と深さを感じさせる喫茶店だ。
「落ち着くところでしょう?」
 小さなお皿にクッキーを二枚乗せて、愛理は侑斗の目の前に差し出した。
「珈琲のおまけ。美味しいから食べてみて」
「…ありがとう」
「愛理ちゃん」
「はい」
 眼鏡をかけた小柄な女性が、愛理にブレンドが入ったカップを渡す。愛理は丁寧に向きを整え、侑斗の前に置いた。
「どうぞ、香子さん特性ブレンド」
「香子さん?」
「あら、その子、愛理ちゃんのお知り合い?」
 ブレンドを淹れていた女性が愛理の隣に立つ。侑斗をじっと見ている香子に、愛理は小さく微笑んだ。
「はい。桜井君はうちの店の常連さんで、良太郎の友達なんです。桜井君、こちら、香子さん。私のお父さんのお弟子さんで、私の師匠なの」
「初めまして、緋山香子です。ここのマスターやってます。良太郎君の友達なんだ。よろしくね」
「桜井侑斗です。大学一年…です」
「へー大学生なんだ。どこ?」
 侑斗が小さく大学名を告げる。香子が楽しそうに笑った。
「あらま、皐月が落ちたとこだわ。貴方賢いのね」
「皐月?」
「近所の悪ガキよ。もうすぐ来るんじゃないかしら?」
 ちょうどその時、からんからん、と入口で音がした。
「こんにちはー!愛理さん!」
 入ってきたのは大学生くらいの青年だった。少し長めの茶髪を後ろで一つに縛っている。人懐っこい笑顔に、一目で人気者だろうということがうかがえる。
「あら、皐月君。こんにちは」
 愛理が微笑みを返す。皐月は少し照れたように笑った後、手に持っていた小さな赤薔薇のブーケをさしだした。
「愛理さん、これ、お土産っす!」
「まあ綺麗…いつもありがとう」
「いえいえ、売れ残りですから!」
「香子さん、花瓶借りますね」
 愛理が奥へと引っ込む。侑斗の隣に座った皐月は、その後ろ姿を嬉しそうに眺めた。
「皐月、お客様がいらっしゃるんだからもう少し静かにして頂戴」
「へいへい」
「うるさくしてごめんなね桜井君。これが皐月。皐月、こちらのお客様、愛理ちゃんの店の常連さんなんだって」
 ぎっと皐月が侑斗を見る。
「へー…愛理さん追っかけてここまで来たワケ?」
 侑斗が何か言うよりも早く、香子の拳が皐月の脳天を直撃した。
「いってえ!」
「自己紹介もせずにいきなり何言ってるの。馬鹿でごめんね」
「馬鹿じゃねえよ!…俺、外村皐月。大学一年。お前は?」
「桜井侑斗」
「桜井侑斗ね。良し覚えた!言っとくけど愛理さんに手を出すなよ?」
 何せ愛理さんは、と続けようとした皐月の言葉を遮って、侑斗は口を開いた。
「…外村」
「皐月でいいよ。みんなそう呼ぶし」
「侑斗君、珈琲冷めるよ?ほら、皐月もこれ飲んだらさっさと帰りな」
 香子が皐月の前にカップを置く。侑斗は言おうとした言葉を飲み込んで、珈琲と向き合った。
「なんだよ~いいだろちょっとくらい…ってなんで牛乳なんだよ」
「珈琲飲めないお子様への気遣いよ」
「飲めるっての!砂糖と牛乳入れれば!」
「はいはいいいから牛乳のんで帰りなさい。愛理ちゃんは忙しいからあんたの世話してる場合じゃないの」
 香子に急かされ、侑斗と皐月は黙ってそれぞれの飲み物を飲む。
「香子さん、皐月君の薔薇、窓に飾りますね」
「ありがと。皐月、次はもうちょっとうちの店に合うやつもってきてよね」
「別に店に持ってきてるわけじゃないんだけど…」
 からんからん、とまた店の入り口で音がする。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。二人ですけど、ここいいかしら?」
「どうぞ。愛理ちゃん、お願いね」
「はい。桜井君、皐月君、ゆっくりしていってね」
 愛理がエプロンを翻し、棚に手を伸ばす。
 そんな姿を見つめる皐月を横目で見ながら、侑斗はこっそり砂糖に手を伸ばした。



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