月草雑記帳

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伝謳交響曲


第一楽章「ディアーハート」3話


こんにちは。拍手ありがとうございます。
だいぶ開き直ったリオンです。いや開き直っちゃダメなんだけどね。
仕事上の失敗でいろいろ学んだので、また捏造に活かそうと思います。実生活に活かせよ。


さて、ディアーハートも3話でございます。
ここからちょっと予想斜め上に話が展開する…かもしれません。
なんか間違ってるところがあったらこっそり教えてくださると助かります。
本編見直した方が良かったんだろうな…まあいろいろ勘弁してください。


それでは、興味のある方のみどうぞ。
ディアーハートの目標は5月完結!








『ディアーハート』3話


「だーもう、めんどくせー…」
 大量のCDを前にひっくり返ったモモタロスに、ウラタロスは一枚のCDを差し出した。
「先輩、この曲なんてどう?」
「あん?」
 顔を上げたモモタロスに、CDを渡す。モモタロスはそれをちらりとみると嫌そうな声を出した。
「アニメの歌じゃねえか」
「まあそう言わずに。アニメってひとくくりにしていると、ダイヤの原石を見逃しちゃうよ。あ、ハナさん」
「何?」
「テーマ、考えたんだけど」
 考えたテーマとその理由を簡単に述べ、ウラタロスは「どう?」とハナの様子をうかがった。
「…成程ね。あんた達はどう思う?」
「ええやないか」
「うん、楽しくなりそう!」
「カメ公の提案ってのが癪だが…それで行くか!」
「「「おー!」」」
「じゃ、僕はこの曲がいいかな。ちょっと一人で練習してくる」
 そういうとウラタロスは歌詞カードを一枚ハナに渡し、車両を後にした。
 隣の車両に入ると、CDラジカセに一枚のCDをセットし、聞き始める。
 CDを最後まで聞き終わると、ウラタロスは慎重に、声をかけた。
「良太郎」
『ウラタロス。どうしたの急に』
「ちょっと出かけたいところがあるんだけど、身体貸してくれないかな、と思ってさ」
『今日は時間あるからいいけど…どこに行くの?』
「それは行ってのお楽しみ。ま、犯罪には走らないからそれだけは安心して?」
 良太郎の答えも待たずに、ウラタロスは良太郎へと憑依し、さっさと歩き出した。


 数十分後。良太郎(inウラタロス)は白い建物の前に立っていた。
『ウラタロス、ここって…』
「この病院の看護師さん、可愛いんだよねー」
『そういうことなら身体貸せないよ…』
 病院の案内図を見ていたウラタロスを追い出して、良太郎は深くため息をついた。
『良太郎…冗談だって』
「じゃあ何しに来たの?」
『えーっと、だから』
 ウラタロスの答えを待っていると、ふと、どこからかピアノの音が聞こえてきた。
『…良太郎、ごめん、ちょっと変わってくれない?』
「…本当にどうしたの?」
 有無を言わせず良太郎に憑依したウラタロスは、少し辺りを見回して走り出した。
 病院の中の、小さなホールの前で足を止める。
『ウラタロス?』
「良太郎…この曲、聞き覚え、ない?」
『…え?』
 静かに流れてくるピアノのメロディー。切ないような、脆いような、それでいて力強いような。
『この曲って…』
 そっとウラタロスが扉を開く。そこには入院着の男性が、ピアノを弾いていた。
 切ったばかりらしい髪に、少しうつろな瞳。
 流暢でいて、たまに止まってしまうおぼつかない手つき。
「…素敵な曲ね。今日はこの辺りにしておきましょう?奥村さん」
 傍にいた看護師がそういった瞬間、良太郎の脳裏に残る顔がホールにいる男性と重なった。
 世界との繋がりを断ち、ピアノと共に生きていた男性。
 そしてその男性を追って出会った、眠り続けていたピアニスト。
 過去で見た顔とは違う表情の、眠っていた時よりも少し年を取った姿で、奥村は看護師に促されて立ち上がった。
『あの時の…?』
「失礼します」
 姿を現した良太郎に看護師は驚き、怪訝な表情になった。
「お見舞いの方ですか?ここは入院棟では」
「すみません、ピアノの音が聞こえたもので…あの、ピアニストの奥村さん、ですよね?」
 その言葉に看護師の表情が和らぐ。
「あら、お知り合いの方?」
「何年か前にはお見舞いにも来させてもらったんです」
「奥村さん、ご存知かしら?」
 そう問われ、奥村がゆっくりと良太郎を見た。
「…申し訳ないが、私はあなたを覚えていないようだ…」
「…そうですね。僕が一方的に知っているようなものですから」
 その言葉に看護師と奥村は怪訝そうな表情になり、良太郎は慌てて話題を変えた。
「いつ、目覚められたんですか?」
「…いつだったかな?」
 ゆっくりと振り向いた奥村に看護師は微笑んで答えた。
「つい先月ですよ。お若いですから回復も早いですけれど、5年も眠っていらしたから…」
 もう時間ですから、と促され奥村は看護師と共に歩いていく。
「あの…」
 良太郎はそう声をかけてから、視線を泳がせ、力なく微笑んだ。
「また、ピアノを聞きに来てもいいですか?」
「…私なんかのピアノで良ければ」
 小さくお辞儀をすると、看護師と奥村は入院等へと戻って行った。


『ウラタロス、急に来たのは、奥村さんに会いたかったの?』
 病院近くの公園。良太郎はベンチに座り、ウラタロスに話しかけた。
「まあ。ちょっとね」
 未だに憑依を解いていない為、傍目からは独り言を言っている少年がいるだけだが、真昼間の公園では気に留める人もいないようだった。
『なんでまた急に…』
「カンかな、なーんて。本当は、CDを見つけたからなんだ」
『CD?』
「そ。PDマネージャーが持ってきてくれたライブ用のCDの中に、奥村さんのCDが混じってたんだ」
『そっか』
「それで、なんだか懐かしくなってさ。でも、起きているなんてびっくりしたよ」
『そうだね。…あの人のことは』
「覚えてくれているかな」
 二人の脳裏に浮かぶのは、黒い服を着てピアノを弾く男性の姿。本当に楽しそうな、二人の連弾。
『これで…戻って、来れるよね、あの人も』
「…うん。きっと」
 青い空を見上げながら、良太郎は静かに微笑んだ。


「うらた!」
 ウラタロスが声をかけるより先に、あーちゃんがウラタロスの足に抱き着いた。
「こんにちは、あーちゃん。うらたじゃなくてウラタロスだってば」
「うらた、今日もピアノ弾いてくれる?」
「うん。とはいっても、もうライブの曲決めちゃったから…」
 あ、と呟いて、ウラタロスはピアノの前に座った。
「あの奥村さんのCDの曲でも弾こうかな」
「うらた、はーやーくー」
「はいはい」
 青い指が鍵盤を滑る。いつものようにじっと聞いていたあーちゃんだったが、曲が終わると立ち上がり、ウラタロスを見上げた。
「どうしたの?」
「あーちゃん。これ、知ってるかもしれない」
「え?」
「うらた、もう一回弾いて?」
 初めての申し出にウラタロスは慌てて鍵盤をなぞる。
「…あーちゃん、これ、知ってる!おかあさんが教えてくれたもん!」
 瞳を輝かせるあーちゃんにウラタロスは小さく拳を握る。
「そっか。じゃあ、この曲、もっと練習しようかな」
「うん、うらた、もう一回!」
「…了解しました。お姫様?」
 再び鳴らし始めたピアノを見つめるその楽しそうな表情をどこかで見たような気がして、ウラタロスは一人、首を傾げていた。

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