月草雑記帳

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伝謳交響曲


第一楽章「ディアーハート」4話


調子に乗って4話を更新しちゃいますよー。
こんばんはです。デイアーハート、ようやく(私の中で)完結しました。そしたらなんと7話まで行ってしまいました。今日で折り返しですね。
気づけば5月があと10日しか残っていませんでしたので、バンバン更新したいと思います。次が全然できてないけど。だめじゃん。


さて、3話で登場した人に驚いてくださったかたもいるのではないでしょうか。…いなかったらどうしよう(笑)。
まあ3話更新したのが最近過ぎるのでネタバレは伏せますので、良かったら読んでびっくりしてください。
「予想できていたよ!」という方。捏造書いて私に下さなんでもないです。


では、よろしい方のみどうぞお付き合いください。
次の駅は、過去か、未来か…?






『ディアーハート』4話



 ライブまであと十日というある日。
「はぁ…疲れた」
『相変わらずというかなんというか…運が悪いよね、良太郎は』
 自転車を押しながら、良太郎はよろよろと坂道を上っていた。
 数時間前、買物に行っていた良太郎は何故か三角関係の痴話げんかに巻き込まれ、危うくその原因を作った人物にされようとしていた。
「ウラタロスが気付いてくれて良かったよ」
『本当。何にもしてないのに主犯扱いは酷いよね。っていうか、初対面なのに』
「ちょっと休憩…」
 良太郎が公園に自転車を止め、ベンチに座り込む。
 一息ついて、あたりの様子を見回した。
「あ…そう言えば此処って、奥村さんの病院のすぐ傍だよね」
『ちょっと様子でも見に行ったら?僕も気になるし』
「そうだね。そうしよっか」
 良太郎は立ち上がると、病院の方へと歩いて行った。


小さなホールに誰もいないことを確認して、良太郎は奥村の病室を訪れた。
「あの…こんにちは」
「ああ…君はいつかの」
「えっと、野上良太郎、です」
「すまないけれど、今日は検査の日でね。ピアノは弾きに行けないんだ」
 おもちゃならあるんだけど、と奥村は子供用の小さなキーボードを取り出した。
「これで良ければ弾こうか?」
「えっと…お願いします」
「じゃあ…」
 良太郎が椅子に座るのを確認して、奥村はキーボードの電源を入れた。軽く指で鍵盤をなぞってから、メロディーが流れ始める。それは数年前に流行ったJ-POPで、流行にそこまで詳しくない良太郎でも知っている程度には有名な歌だった。
「これ、知ってます」
「そう?有名だからね。私はこの歌が好きでね。初めて出したCDの一番最後にも、これを収録させてもらったんだ」
 キーボードを直し、奥村は改めて良太郎と向き合った。
「何か、聞きたいことでも?」
「えっと…」
 どう切り出すべきか悩み、良太郎は薄く笑いながら言葉を選んだ。
「目を覚ましてから、会いたい方には会えましたか?」
「そうだね。家族とはほとんど絶縁状態だったけど、流石に会いに来てくれたよ。話をしたい人の中には、まだ会えていない人も多いかな。それに、行方がわからない人もいるしね」
「え?」
 良太郎にお茶を勧めてから、奥村は静かに話し出した。
「事故に逢う前、付き合っていた女性がいてね。些細なことで喧嘩をして…それからどうしたのか、わからなくてね」
 恥ずかしそうに微笑むと、奥村はポン、と鍵盤を一つ鳴らした。
「元気にしてくれているのなら、それでいいんだけど」
「名前は、なんていうんですか?」
「え?」
 奥村を真っ直ぐに見て、良太郎は口を開いた。
「知り合いに、探し物とか得意な人がいるんです。絶対見つかるなんて言えませんけど、聞いてみます」
 しばらくぽかんと良太郎を見て、それから奥村は優しく微笑んだ。


「うらた!」
 保育園の前を通りかかったウラタロスは、声に気付いて立ち止まった。
「やあ、あーちゃん」
「うらた、今日は来てくれないの?」
「あと一週間で本番だからね。そろそろ真面目に練習しないと怒られちゃうんだ」
 ふーん、と言ったあーちゃんの寂しそうな様子に、ウラタロスは保育園の門を開けた。
「ま、気分転換も必要だよね。あーちゃん、ピアノ一曲だけ弾いていい?」
「いいよ!」
 嬉しそうにピアノの前に座るあーちゃんを見て、ウラタロスは何を弾こうかと考える。
「…同じ曲ばっかじゃ飽きるしね」
 選んだ曲を弾き始める。イントロが終わった時点であーちゃんの表情を見て、ウラタロスは思わず演奏を止めた。
「あーちゃん…どうしたの?」
「え?」
 ピアノを見つめるあーちゃんの瞳からは、ぼとぼとと大粒の涙が零れていた。
「えっと…ごめん。嫌いな曲だった?」
「んーん。でも、知ってるお歌…のような気がする」
 ごしごしと目を擦ってから、あーちゃんはピアノをじっと見た。
「おとうさんが、好きなお歌…」
「おとうさんの事は…覚えてるの?」
「知らない」
「…そっか」
「…ねえ、うらた」
「あー!カメちゃんこんなところでさぼってるー!」
 よく知った声が聞こえて、ウラタロスはバッと振り向いた。
「リュウタ?なんで此処に?」
「カメちゃんみたいなピアノ聞こえたから!もー!ハナちゃん怒ってるよ!」 
 保育園に上がり込み、ウラタロスを引きずるリュウタロスを宥めて、ウラタロスはあーちゃんを振り返った。
「あーちゃん、ごめんね。今日はもう帰らなきゃ」
「…うん」
「ライブ、アヤ先生とミナ先生に頼んであるから来てね」
「うん」
 あーちゃんに軽く手を振ると、ウラタロスはリュウタロスに引きずられながら保育園を後にした。


「ちょっと!いい加減にしなさいよ」
 デンライナーに戻った瞬間に降って来た雷に、ウラタロスは素直に頭を下げた。
「ごめんごめん。女の子の誘いは断れなくて」
「またどっかフラフラしてやがったんだろ。ったく」
「リュウタ、よう見つけて来たな。偉いで」
「でしょー?もう、カメちゃんしっかりしてよね」
「だからごめんって。じゃ、通し稽古もう一回、でいいのかな?」
「そ。じゃ、準備して」
 それぞれが楽器を構える。その状態を確認して、ハナが開始の合図を出した。


「…え?良太郎、それってマジな話?」
 デンライナーの一角。
 モモタロスが個人レッスンをやらされている間に訪れた良太郎とウラタロスは小さな声で話をしていた。
「うん。尾崎さんに調べてもらったんだけど、たぶん間違いないと思う」
「それにしても、よくこんな短時間でわかったね」
「変わった苗字の人だったし…それに、結構大きな飛行機事故だったからね。記録もたくさん残ってたみたい」
「1年前に起こった飛行機事故。で、奇跡的に生き残った女性が、奥村さんの恋人…」
「とりあえず当時入院してた病院ならわかったんだけど。これから行ってみる?」
「そうだね。ハナさんが先輩に気を取られてるうちに、急ごうか」
 二人がこそこそと出ていく隣で、キンタロスが椅子に座ってイビキをかいていた。

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