月草雑記帳

知識樹の奏


知識樹の奏 第二章「任命式」


遅くなりましたが「知識樹の奏」、第二章です!!
一話のところにも書きましたが、これは私、リオンと「ひつじのへや」のNANさんとの合作になっております。
ここ、「月草雑記帳」では地の民(フィロダージ)、ホテイを主人公として「地の書」なお話が進みます。一方、「ひつじのへや」では天の民(フィロティエン) 、シャルアンが主人公の「天の書」です。二つのお話が離れたり近づいたりする…予定です(苦笑)。一方だけでもお話は大丈夫いですが両方読むとなお楽しい…かと。
「天の書が気になる!」という方はぜひこちらへ。っていうか個人的にはこっちの方が素敵だとおもうんですよー。ええ。


さて、第二章をお届けいたしまーす!
こちらは完全オリジナルとなっております。著作権は私とNANさんにありますので勝手にコピーとかしないでくださいね。


サブタイトルは「任命式」です。どうぞ!!





「任命式」


 夜明け前、僕は<祭>のプログラムの最終確認のため、<文化大使集会>に出ていた。その場には昨日知り合ったシャルアンさんも居る。いよいよ<祭>が、そして僕の<文化大使>としての生活が始まるんだ。


 <集会>が終わるとクジュ殿がこちらにやって来てくださった。クジュ殿は僕の師匠で、僕に<文化大使>を譲ってくださる方。僕は頭が上がらない。
「ホテイ。いよいよだな。」
「はい。」
 緊張している僕を見て、クジュ殿はちょっと笑った。
「お前は賢い。それもただ賢いだけじゃなく、<若者>一敏感だ。度胸もあるしな。運動能力が少し劣る所はあるけど、その賢さと鋭さでカバーできる。良い<文化大使>になる。保証する。」
 クジュ殿が僕の賢さを保証してくれた。うっかりちょっと泣きそうになって、僕はぱちぱちまばたきをした。
「頑張ります。…クジュ殿、ご指導、よろしくお願いします。」
 僕は頭を下げて<若者>の集合場所に向かった。緊張するし怖いけど、やれるだけやる。それが今僕に出来る事だ。


 僕はこの<祭>で<文化大使>に<任命>される。だから<任命式>までは<祭>を楽しめばいい。でもその時間はあっという間で、気付いたら僕はクジュ殿や同期になるエヒズ殿と一緒にスタンバイしていた。
「ホテイ。出番だ。」
 エヒズ殿にささやかれた。
 緊張がピークに達する。でも、石で創られた舞台にあがり、反対側から入ってきたシャルアン殿と目が合うと、不思議と気持ちが落ち着いた。


 僕達任に着く者とクジュ殿達任から降りる者が皆に良く見えるよう一列に並んだ。舞台に立ってこちらを見ていた天の民(フィロティエン) の<長老>が頷いて口を開いた。
「これより、<任命式>を始める。<祭>で<文化大使>の任から降りる者。テューダ殿、ウィレ殿、クジュ殿、シアモ殿。」
「「「「はい。」」」」
 四人(?)が一歩前にでる。
「<後の奏>を。」
 役目を終える者の<文化大使>としての最後の<奏>が始まる。深く美しい<奏>は、<文化大使>としての歩みを詠う物だ。僕たちが詠う<奏>はどんなものになるのだろう。静かに終わった<奏>には、反省も後悔も感じられなかった。ただ、誇りだけがそこにあった。気がする。


「<証>をこちらに。」
 クジュ殿、シアモ殿、テューダ殿、それにウィレ殿が首から下げていた<証>を持ち、後ろをずっと流れている<滝>に向かう。<証>を避けて<滝>が開き、<滝>の中にある<知の棚>が姿を表した。<証>を<知の棚>に置くと、<証>はそれまでの色を失い、辺りの色を切り取る透明になった。
「では、<知の意志>に感謝と祈りを。そして次なる<文化大使に>祝福を。」
 <先代文化大使>となったクジュ殿が声をあげた。
「次なる<文化大使>シャルアン、フリック、ホテイ、エヒズ。君たちに<知の意志>の加護がありますよう。」
 祝福を受けた僕達は<先代文化大使>から<知の棚>なあった<証>をいただいた。<証>を失った<滝>が閉じてゆく。何百年も前から<文化大使>達を守り続けている<証>は僕達の首で暖かく輝いていた。まっすぐ前を見たら、知識樹がはっきりと見えた。知識樹の前で<証>を受けとる。今、一つの夢が叶った。


「では、<先の奏>を。」
 いよいよだ。<文化大使>になることが決まってからずっと練習してきた<先の奏>。昨日初めてシャルアン殿とフリック殿と合同練習をしたけど、二人とも聞いたこともないくらい美しかった。エヒズ殿も<奏>の才に溢れているから、一番下手なのは僕。誰が見ても…いや、聞いても僕。でも絶対足は引っ張りたくない。僕はエヒズ殿とリズムを合わせて、最初の一音を弾いた。


 <先の奏>の間はとにかく夢中で、自分がどう奏でたのかよくわからないけど、誰も僕を睨んでないから大きな失敗はしなかったんだろう。良かった。


「では、それぞれの任を言い渡す。」
 来た。<文化大使>一人一人に重要な<使命>が言い渡されるこの時が。<文化大使>にはいろんな<使命>があるけど(<外>に行く者とか<教師>になる者とか。)僕は出来れば<学者>になりたかった。<知の意志>を研究する<学者>。だから、<学者>であり<教師>であるクジュ殿は僕の憧れなんだ。そのクジュ殿から<文化大使>になれ、と言われた。その意味が、ようやく分かるんだ。
「フリック殿は<教師>の任に。」
 ドクリ、と心臓が跳ねた。
「エヒズ殿は<先導者>の任に。」
 凄い。<文化大使>一年目で<先導者>の任に着くなんて。
「シャルアン殿、並びにホテイ殿。」
 あれ、二人一緒?
 僕は戸惑いながらも返事をした。
「二人には<異邦者>の<世話役>の任に。」
「<異邦者>の!?」
 小さく声をあげたシャルアン殿は慌てて口を押さえてたけど、僕だって心の中では絶叫してる。
 そんな任は、聞いた事がない。


 <異邦者>の<世話役>。そう思って<異邦者>が眠っていた辺りを見たらそこには誰もいなくて。
 いつの間にか起き上がっていた<異邦者>は皆に取り囲まれて困ってるみたいだった。
「丁度目が覚めたようだな。<異邦者>殿。」
 視線から自分の事だとわかったのか、<異邦者>はゆっくりとこちらを見た。伝説に聞く<紅花>はこんな色なのだろうか。そんな紅い目が僕達を見た。
「心配されなくともよい。貴方の体が本調子に戻るまで、この二人が貴方の世話をする。分かるかな?」
 <異邦者>はこっくりと頷いた。僕は誰にも気付かれないようこっそり爪を自分にたててみた。
 痛い。
 どうやら夢じゃなく、僕は<異邦者>の<世話役>として<文化大使>になったようだ。

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