fc2ブログ

月草雑記帳

竹華


竹華 「節度」第五幕


ロケ巡2010のまとめが終わってませんが、だんだん忙しくなってきているので(新学期が近いからニート生活が終わってしまうのです)、ちょっと竹華更新です。忘れてませんよーって事で。


一応補足いたしますと、「侍戦隊捏造大長編」です。
興味のない方、原作の素晴らしさを損ねたくない方はすごい勢いで回れ右願います。はい。
後悔しても知りませんよー。


というわけで竹華の説明でも。
多分、次の幕から話が「別れ」に向かって進むと思います。
でもその前に源太との出会いなど書かなきゃいけない事がいっぱいあるので、「節度」の更新はいったん止まるかもしれません。すいません。
本当にちまちまちまちまやっている物を読んでいただいている方がいてくださって本当に嬉しいです。
拍手ももらいました。さらに嬉しいです!!ありがとうございますです。


さて、ここから下は覚悟の出来た方のみの閲覧でお願いしますよー。
そして今回出てくる殿についてのお話はある事項を除いてすべて捏造ですよー。
ていうか全体的に捏造です。真実はひとつだけですはい。
それでもよろしい方のみ、どうぞご覧くださいませ。










「節度」第五幕



 梅雨明けの、明るい空の下。
 そんな空にふさわしくないしょんぼりとした顔つきのまま、丈瑠は源太に手を振った。
「源太、またね。」
「おう…。丈ちゃん、だいじょぶ?」
「うん。また明日ね。」
「おう!明日朝また迎えに行くからな!寝坊するなよ!!」
 源太はにかっと笑い丈瑠と彦馬に手を振ると、自宅の方へと歩いて行った。
「殿。我々も帰りましょう。」
「うん。」


「おかえりなさいませ。丈瑠様。彦馬さん…。あら?どうされました?」
「いやなに、少し、な…。」
 丈瑠はばつの悪そうにうつむいた。
「モヂカラの練習、してくる。」
 そう呟くと丈瑠はとてとてと部屋に入って行った。
「…どうなさいました?今日は源太君と遊園地に行かれたのでは?」
「ああ。だが、殿はお化け屋敷が苦手だったようで…な。源太もいたし、ワシの手前、言えなかったんだろうな。無理に入って…。」
「そうなんですか…。あ、お茶を淹れますね。」
「うむ。」
 彦馬はやってきた黒子に汚れものを渡すと、みつばに続いて奥に入って行った。


「少し…意外です。丈瑠様がお化け屋敷を怖がるなんて。」
 自分もお茶を飲みながら、みつばが呟いた。
「確かに丈瑠様は…その、怖がりですし、正体のわからないものが怖いのはわかりますが…あれはつくりものでしょう?」
「うむ…。仮にも志葉家当主であられるから、お化けそのものは怖がっていらっしゃらないと思うのだが…。」
「?」
「いや、見ていて思うのはな…。殿は『人をだます』という状況にひどく拒絶反応を起こしているようにみえるのだ。」
「…と、言いますと?」
 彦馬は少し考え、言葉を選びながら話し始めた。
「つまりな、そもそもお化け屋敷というのは『お化けのふりをしたものが人を脅かす』というものだろう?」
「はい。」
「殿は『嘘をついてまで人を驚かす』という状況が怖いのではないかと思うのだ。」
「…?」
「それはおそらく、『嘘をついてまで人の命を預からなくてはならない』御自分の状況と重ねられているのではないか。」
「…え。」
 またしばらく間を開けて、彦馬は話す。
「殿は元々、嘘をつくのが大変苦手…というかお嫌いな方だ。そして同様、嘘をつかれるのも苦手とされているのだろうと、思うのだ。」
「…そう、なんですか。」
「ま、殿の事は殿にお尋ねせねばわからんが…。殿にお聞きしても何故怖いのかなど分かるはずもないからな。」
「ええ。」
 丁度その時、ガタンという大きな、何かが倒れたような音がした。
 一瞬遅れて、がちゃんと何かが割れる音や崩れるような音も聞こえてくる。
「「!!?」」
「彦馬さん!」
「ああ。」
 二人は同時に立ち上がって走り出した。


「殿!」
「丈瑠様!?」
 ふたりが丈瑠のところへ駆けつけると、丈瑠はいつもの席でぎゅっと身体を丸めて小さくなっていて、目の前の机はひっくりかえされ、墨や硯などがひっくり返っていた。
「これは…?」
「丈瑠様?どう、なさいましたか?」
 丈瑠はみつばの声に顔を上げて、慌てたように立ち上がり、自室へと走って行った。
「あ!丈瑠様!?」
 みつばは追いかけようとしたが不意にめまいを感じて座り込んだ。
「みつば。無理はするな。ワシが追う。お前はここを頼む。」
 彦馬はそういうと丈瑠を追う。黒子が慌ててごみ袋や箒をもって現れた。
「…丈瑠様…ここで何が?」
 黒子が元に戻した机の下からは、さっきまで練習していたらしい文字の書かれた半紙が出てきた。
 黒子はそれを、みつばに手渡す。
「…これは…『怖』?」
 それは今日の練習課題ではないはずの文字だった。おそらく、今日のお化け屋敷の恐怖から、なんとなく書いてみた文字だったのだろう。
「…黒子の皆さん、申し訳ありませんが少し部屋から離れていただけませんか?」
 黒子はお互い顔を見合わせると、そそくさと部屋を出た。
 みつばは誰も居なくなった部屋で筆をとると、紙に『憶』の文字を書く。




「彦馬さん。」
「ああ、みつば。調子はどうだ?」
「大丈夫です。それより、丈瑠様は?」
「閉じこもったまま出てきてくださらない…いったい何がおありに」
「少し、『記憶』をのぞかせていただきました。」
 静かな声で、みつばは言った。
「どうやら、母君様がお亡くなりになられた時の事を、思い出されてしまったようです。」
「…そう、か。」
「丈瑠様は、母君様を、亡くされていらしたのですね。…外道集に襲われて。」
「…ああ。その時殿をお守りくださったのが先代…志葉 雅貴様だ。その縁もあって、殿は…今殿としてここにいらっしゃる。」
「…そうでしたか。」
「みつば、どうするべきだと思う?声をおかけするべきか、それとも」
「私に、行かせていただけますか?」
 彦馬はしばらくためらって、それから頷いた。


「丈瑠様。」
「……。」
「お願いが、あるのですが。」
「……なに?」
「剣術の稽古をしたいのです。…付き合っていただけますか?」
「…ちょっと、だけなら。」
 二人は庭に出て、向き合って竹刀を構える。
「…行きます。」
 みつばが静かに打ち込み始める。丈瑠は一瞬ひるんだものの、それを受けて攻撃に転じた。


 かきん、と音を立てて、みつばの手にあった竹刀が飛んだ。
 丈瑠は荒く息を吐きながら、驚いて竹刀が落ちた先を見た。
「…やっぱり。強くおなりですね、丈瑠様。私はもう、剣術では貴方にかないません。」
「…わざとじゃ、なくて?」
 くす、とみつばは微笑んだ。
「私はそんなに器用やありませんよ。…ここ数カ月で、丈瑠様は本当に強く、たくましくおなりです。そして、殿様らしく。」
 でも、と丈瑠はうつむいた。
「みつば…。僕、怖いものがいっぱいあるんだ。殿様なのに。そんなの、駄目だよね?お母さんも、護れなかったんだ。そんなの、駄目だよね?そんなの、殿様じゃないよね?」
「…いいえ。怖いものがあったってかまいません。」
「え?」
 顔を上げた丈瑠に、みつばは笑顔を見せた。
「怖いものがあったってかまいません。怖いものに負けないように、強くなればよいのです。丈瑠様は、充分お強くなられました。今なら、どんなお化けだって斬れますよ。」
「…お化け屋敷壊しちゃだめだよ。」
「ふふ、そうですね。」
 みつばは少し、考えて、躊躇って、それから真顔で言った。
「…なら、家臣を頼ってはくださりませんか?」
「え?」
 すっと、みつばは丈瑠の前に片膝をついた。
「丈瑠様。もし怖い事があれば、私にお話しください。…私はどんな事でも受け止めます。」
 丈瑠はしばらく黙っていたが、みつばの眼をまっすぐに見て話し出した。
「……わかった。でも、みつばも怖い事があったら、言ってね?…役に立たないかも、しれない、けど…。」
 だんだん声が小さくなる丈瑠に、みつばは笑いかける。
「はい。ありがとうございます。丈瑠様。」
 その顔を見て、丈瑠はようやく笑顔になった。

スポンサーサイト




TB(0) | CO(2) *Edit

~ Comment ~

おかえりなさい♪ 

やっぱり、今日でしたか? 殿はまた強行軍!? だったみたいなのでちょっと、心配(苦笑) 
それともう彼、八重歯・・・ありません。

と、突っ込みをw この時期の子殿なら、
「源ちゃん!」
呼びでは?? 子殿(涙)

teddyさんへ 

コメントありがとうございます!!返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。

ああ…八重歯…好きだったんですが(笑)。

自分、殿の「源ちゃん」呼び大好きなんですが、本編の回想シーンで「源ちゃん」とも「源太」とも呼んでいなかったと記憶しているので、「源太」と呼ばせていただきました。
ひょっとしてどこかで呼んでましたか?でしたら教えてください。
あと、200を踏まれたそうで!おめでとうございま…す?実は100は自分で踏んだんですよね…(笑)。
何かリクエストなどあれば…。ただし、CPは苦手です!!
管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

~ Trackback ~

トラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 ◆Home  ◆作品*  ◆All  ◆通常ブログ画面  ▲PageTop