月草雑記帳

侍戦隊捏造文章


『突撃家臣飯』後編


拍手ぱちぱちありがとうございます!


後編です。でも最終幕ではないと言うトリック。
そしてどうでも良い話ですが、前回の「貸切事件」は某執事漫画のツインテールお嬢様を参考にしました。


では前置きが短いですが。よろしければどうぞ。



『突撃家臣飯』後編


「で、母上。そろそろこの連れまわしの目的を教えていただけますか。」
「む、そろそろおやつの時間だな。」
「…聞いてませんね。というかもしかして国境を超える気ですか。」
「丈瑠、獅子折神を貸せ。」
「母上…まさか。」
「折神で行く。茉子はハワイだからな。」
「母上!折神を乗りもの扱いしないでください!」
「飛行機を貸し切るのは面倒だしな。だいたいお前はパスポートを持っていないだろう。」
「…そういうの、密入国って言うんじゃないですか?」
「何も悪い事はしないからな。*良い子は真似しないでね!」
「真似できません!」
「良いから行くぞ。」
 このままではひとりでも行ってしまう。
 ならば自分が行っても行かなくても同じかと、丈瑠は虎折神を取りだす。
「母上、道はご存じなんですか?」
「心配するな。折神同士ならお互いの居場所はなんとなく感知できるものだ。獅子折神に亀折神を感知してもらえば良い。」
 そういうと薫は獅子折神を巨大化させる。
「丈瑠、念のため乗ったあと『透』のモヂカラを使え。見えなくなるからな。」
「わかりました。」
 いろいろ諦めて、丈瑠は虎折神に乗り込んだ。


「前前から思っていたんだ。他の戦隊の皆も乗って移動すれば早いのに、と。」
「いくら視聴者が思ってるからって、そんなこと得意げに言わないでください。」
 ハワイに向かって飛びながら、二人は会話をつづけていた。
「だって早いだろう?」
「確かに早いですけど…大きすぎるしあまり日常的に使えるものではありません。」
「わかっている。」
「わかってる人はこんな使い方をしません。」
「丈瑠、ハワイとの時差は19時間だ。向こうは夜だからな、時差ぼけするなよ。」
「大丈夫です。多分。それより、外道衆が出たらどうするつもりなんですか。」
「案ずるな。私の『影』を残してある。しばらくは保つ。」
「…『影』を作って保ちつつそれでまだ折神を操るモヂカラ余裕で残っているんですか。」
「あたりまえだ。私は当主だったし、それに今日はとても楽しいからな。」
「そうですか。」
 怒っていいのか和んでいいのかわからず、丈瑠はしばらく悩んでいた。


「着いたぞ。」
「確かに早いですね。」
 折神を通常のサイズに戻し、丈瑠と薫はハワイの地へ降り立った。
「それで、茉子のうちはどこなんですか?」
「ああ、こっちだ。」
「そしてなんで知ってるんですか?」
「住所を見ればわかる。」
 薫の能力の高さに、丈瑠は尊敬の気持ちと不安の気持ちで半々になった。
「お姫様、丈瑠!」
「茉子。」
「おお、出迎え御苦労。」
「本当に折神で来たんですか?」
「ああ、勿論だ。」
 す、と茉子が丈瑠に近寄る。
「なんで止めなかったの?」
「…止められなかったんだ。」
 茉子がくす、と笑う。
「おかあさんには弱いのね。お殿様。」
 答えを待たずにくるりと向きを変え、茉子は薫の横に並んだ。
「…うるさい。」
 小さい声でそう言って、丈瑠は女二人の後に続く。
 かわいらしい豪邸のカフェテラスのようなところに案内され、二人はそこへ腰かけた。
「今日はお父さんもお母さんも出かけてるから、ゆっくりして行ってね。」
 そう言って茉子がお皿に山盛りにしたお菓子を二人の前に置く。
「マラサダっていうお菓子。揚げたてをどうぞ?」
 薫がひとつ手に取る。
「これは…沖縄の土産物に似ているな。」
「ああ、サーターアンダギー?でもあれよりふわふわよ。」
「俺には揚げパンに見える。」
 丈瑠も同じように一つをつかんだ。
「ま、近いわね。クリームとか入れてもいいんだけど、丈瑠あんまり甘いの好きじゃないかと思って何もいれないのにしたわ。」
「…。」
「…。」
「…食べないの?」
 茉子の声に丈瑠が覚悟を決めてマラサダを口に運ぶ。
「…どう?」
「…うまい。」
 一言だったが顔色からも嘘ではないとわかる。
 薫はというと、既に二つ目に手を伸ばしている。
「良かった。ハワイに来てから毎日のように練習したんだ。」
 心底嬉しそうに茉子が笑う。
「茉子、これはおいしいな。」
「いっぱいあるから、よかったら持って帰って。」
「ああ。」
 珍しい料理を味わって、丈瑠はお茶を飲む。
「じゃあ丈瑠。頼みごとなんだけど。」
「…なんだ。」
「今度知り合いの子どもたちに書道を教えてあげようと思うんだけど、お手本書くの手伝ってくれる?」
「資料を取り寄せたらどうだ?」
「んー、印刷されたのじゃなくて、本物の墨と紙と筆で書かれた奴を見せたいのよね。」
「ほう。ならば私も手伝おう。」
「わ、ありがとうございます!」
「それで、なんと書けばよいのだ?」
 さっさと進む話に今度も口を挟めず、丈瑠はおとなしく墨をすることにした。


「よし丈瑠。では次だ。」
「次…。母上もしかして」
「さ、虎折神の準備は良いな?しっかりと私に着いてこなければ道に迷うぞ。」
「母上!本気で行くつもりですか!!」
「当たり前だ。寿司屋とはいえ、あいつも立派な家臣だからな。」
「明日にしませか。」
「明日私は学校に行かなければならないのだ。」
 さっさと獅子折神に乗ってしまった薫を追いかけて、丈瑠と虎折神も宙を駆った。


「よう!丈ちゃん、お姫さん、久しぶり!」
「へいらっしゃい!」
「いきなり昼間になったな…。」
「フランスは日本との時差が八時間だからな。」
 20時のハワイから12時のフランスに移動し、若干時差ぼけを感じる。
「さて寿司屋。手紙は届いたか?」
「ああ。まさかフランスに矢文が来るとは思わなかったから…そりゃびっくりしたぜ。」
「…矢文?」
「ありゃ?丈ちゃんが送ってきたんじゃねえの?」
「ああ、あれは私が射た。」
「「日本から?」」
「日本からだ。モヂカラさえ使えれば、大した技ではない。」
「…丈ちゃん、お姫さんマジですごいな。」
「そうだな。」
「それより源太。早く寿司を食べさせてくれ。」
「おう!おフランスで仕入れた食材を使った大サービス品だ!」
「ささ、お座りくだせえ!」
 源太とダイゴヨウに勧められ、二人は席に着いた。


「どう?」
「普通だ。」
「普通だな。」
「ぐあーーーーーー!ちょっと、丈ちゃん!」
「残念だったな源太。サービスはなしだ。」
「あの母上。大体予想はしてますけど今日一日について説明していただけますか?」
「ああ。五人の家臣にそれぞれ手紙を送っておいた。」
 源太が手紙を引っ張り出す。
「内容はな、『丈ちゃんに料理を出して、おいしいと言わせたら好きな命令を一つして良い』っていうやつ。」
「…やっぱりですか。」
「何、お姫さん、丈ちゃんに知らせてなかったの?」
「ああ。その方がおもしろいからな。」
 はっきりきっぱり言い切って、薫はお茶を飲む。
「はは、遊ばれてる丈ちゃんもなかなか良いぜ?」
「そうか。」
 なんだか一日の疲れがどっと押し寄せてきて、丈瑠はもう一口寿司を頬張る。
「む、もうこんな時間か。丈瑠。そろそろ帰るぞ。」
「ああ、そか日本はもう夜か。気をつけてな。」
 丈瑠が立ちあがって源太を見る。
「…源太、お前、店、大丈夫か?繁盛してるのか?」
 ずっと気になっていた事を思いきって聞いてみる。
「んーまあぼちぼちってとこかな。ま、心配すんなって!いくら繁盛したって丈ちゃんにはいつでも食わせてやるからさ!」
 意図した答えとは違うものが帰ってきたが、丈瑠は微笑んだ。
「そうか。なら、またな。」
「おう!皆によろしくな。」
 そういうと源太は薫に包みを手渡す。
「お土産、フランスの菓子。家帰って食べろよ。」
「おお、気がきくな。ありがとう。」
「丈ちゃんはこれ、エッフェル塔の置物!丈ちゃんの部屋殺風景だもんなー。これでも飾ってろよ。」
「…ああ。」
「またいつでも来てくだせえ!」
 源太とダイゴヨウに見送られ、二人は折神に載ってフランスを後にした。

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