『赤い糸』
朝日が昇ってしばらくして。
「明日って言ってたし…良いんだよ、な…?」
リクは躊躇いがちに、柱を叩く。
「に…ニノさーん。俺ですけど。」
「リク。」
カーテンが開き、ニノが顔を出す。
「久しぶりだな。最近構ってやれなくてすまなかった。昨日は何の用だったんだ?」
「に、ニノさん…」
「ん?どうした?」
「ここ数日…一体何を…?」
「ああ、コレを作っていたんだ。」
ニノが一度奥に引っ込む。そして赤い何かを抱えて現れた。
「え…ニノさんこれって…」
「知らないのか。まふらーだ。」
「まふらー…マフラー!?」
「ああ。牧場で毛糸をもらってな。作り方はP子が教えてくれたんだ。」
「ニノさんが…手編みのマフラーを俺に?」
「恋人だからな。巻いてやろう。」
ニノが近付いてくるので、リクは思わず目を閉じた。
ああ…暖かいな…。
暖かさが首から肩に…腕に…腰までも…
「って長すぎますよ!?」
気付くとリクはマフラーでぐるぐる巻きにされていた。
「そんなことはない。足りないくらいだ。」
「ニノさん、俺をミイラ男にするつもりですか?」
「金星では、この長さで愛情を表現するんだ。」
「へ?」
にこ、とニノが笑う。
「本当はもっともっと長くしたかったんだがな。」
「ニノさん…。」
リクはしばらく考えた後、マフラーを外し始めた。
「リク?」
「ニノさん、本当に、ありがとうございます。」
「ああ、気にするな。」
「でもこれじゃあ、一方通行みたいです。」
「?」
「だから…これでいかがです?」
リクがニノの首にマフラーをかけ、さらに自分にもマフラーをまく。
赤いマフラーが二人を繋ぐ形になった。
「おお。」
「これならちょうどいい長さです。」
すっと右手を出して、リクがニノに向き合う。
「ニノさん。昨日の続きです。」
小首を傾げ、微笑む。
「俺と一緒に、河口まで歩きませんか。」
ニノは躊躇いなく左手をリクの右手に乗せた。
「ああ。行こう。リクルート。」
河口への道を、赤いマフラーで結ばれた恋人達は歩き出した。
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