『家庭教師探索中』
それは、まだ混み出す前のスーパーの野菜売場。
その場所には珍しい、茶髪の若い男性が買い物をしていた。
男性は向かい側から歩いてくる相手に気がつき、頭を下げた。
「あ、どうも。」
相手は無言で会釈を返した。
「今日は人参が安いですねぇ。」
相手がまた頷く。
「どうしました、なんだか元気ないですよ。」
今度は相手は首を横に振った。
「そうですか?何かあったらいつでも相談してくださいね。」
す、とポケットに入れていたキャンディーを取り出す。
「困っている人を助けるのが趣味ですから。」
相手がお辞儀をしてキャンディーを受け取ろうとすると、懐から紙が一枚落ちた。
「あ、何か落としましたよ。『家庭教師派遣』…?もしかして、家庭教師をお探しなんですか?」
その問い掛けに、相手が頷く。
「良かったら僕が…ああ、ちょっとすみません。」
男性がなんだか不自然に、柱の陰に向かう。
相手はそれを黙って見送った。
「デーネーブー!お前、なに考えてんだ!」
黒と緑の怪人に掴みかからん勢いで、茶髪の青年は怒鳴った。
「だ、だって侑斗アルバイト探してるって言ってたし…」
「名前も知らない怪しい奴から仕事もらおうとすんな!」
「いや、でも礼儀正しい人だし、此処でよく会うし…」
しどろもどろになるデネブに侑斗はため息を吐いた。
「あのな。今まで突っ込まなかったけど。」
「うん?」
「この時代に黒子がいる時点でおかしいんだよ!」
先ほどの会話の相手、黒子はまだ野菜売場にいるようだった。
「いや、ああ見えていい人なんだ。」
「…スーパーに黒子がいる時点で変だろ!」
「いやぁ、それを言ったら俺だって…」
ねぇ、と首を傾けるデネブに侑斗はまたため息を吐いた。
「とりあえず、あんまり他人と関わんな。」
「…わかった。じゃ、買い物を続けるぞ。」
そう言うとデネブがまた侑斗に憑依する。
「お待たせしました!」
そしてまた笑顔で黒子に向かっていく。
「家庭教師お探しなんですよね。じゃあ僕が教えますよ。こう見えても勉強は得意なんです。」
言い終わった瞬間、デネブが侑斗から弾き出された。
「デネブお前…いい加減にしろ!」
「ええー?折角のチャンスだったのに。」
「なんのだ!」
そしてこちらを凝視している(らしい)黒子を見た。
「悪いけど、もうコイツと…ん?」
侑斗の視線が黒子の服に付いているマークに集中する。
「これは…。」
「じゃあ、俺じゃなくて侑斗が教えますので。生徒さんはおいくつ?…高校生ですか。じゃあ、あと名前と住所を」
「話進めようとすんな!」
またつかみかかろうとした侑斗に黒子がそろばんを差し出した。
「?どうしました?」
「…ひょっとして、時給か?」
こくり、と黒子が頷く。
「じゃあ後は何時に行けばいいのかを」
「だから俺抜きで話進めんな!」
そう言いながら、侑斗はまだマークについて考えていた。
「…その生徒。名前は、志葉か?」
侑斗の問いに、黒子は頷く。
「そうか。」
「お、侑斗やる気満々だな?」
「違う!…でもまぁ、一回行ってから決めるのも悪くないだろ。」
そう言った侑斗に黒子が住所など要項が書かれた紙を渡す。
「じゃあ、早速明日にでも伺いますね。侑斗、良かったな。」
「あのな…。とりあえず買い物して帰るぞ!」
「あ、人参…」
黒子に一礼して、デネブは歩いていく侑斗に追いつく。
「侑斗~。」
「うるさい。」
がつ、と侑斗がデネブを一度叩く。
それからぼそりと呟いた。
「志葉の家、か…。」
「ん?何か言ったか?」
「何も。デネブ、さっさと来い。」
「了解。」
またデネブが侑斗に憑依する。そして、振り返ることなく歩き出した。
彼らがまた「再会」を果たすのは、そう遠くない未来の話。
ーーーーーーーーーー
補足。
「時空狭間」と「超越時空炎鳥伝説」の間の話ですー。
なんで侑斗が志葉家で姫の家庭教師やってたかっていう話ですね。
「デネブと黒子さんがスーパーで友達になった」という裏設定はあったものの書くとこなかったもんで。
teddyさんと言えば侑斗!と思って書いてみましたが…やっぱり前と後ろが決まってると難しいですね…。
teddyさん、こんなもんでよかったらもらってください!
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1001GET!
気分はデネブ?
ばっちり、頂きました。
返しません!!
そして、番号もですよ。
・・・自分、もっとその偏差値↓
潜ってますもん(爆)