月草雑記帳

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創作文章(その他)


七色短冊の夕べ 4話


こんばんは。


明日はお祭りです。レポート締め切り前ですが乱入してきます。祭りの浮かれ具合と終わる寂しさを感じにいきたいです。まぁ他に予定はあるんですが。


というわけで本日の更新。
興味ある方のみどうぞ。



『七色短冊の夕べ』
4話


「というわけだ。もう見学先には話をつけてあるからな。安心して行ってこい。」
美術部の顧問にそう言われ、俺とは顔を見合わせた。
今年の美術部新入部員は5人。その中で男子は俺とだけだ。
「新体操部のポスター、かぁ。」
「先生、期限は?」
「なるべく早い方がいいそうだ。早速今日から行ってくれ。」
新体操部から美術部に“宣伝用ポスターを描いてほしい”と依頼があったらしい。ポスターなのだから当然、練習を見ながら描いてよいらしい。なんというか、偶然とはあるものだ。
「どんなポスターでもいいからな。まずは構図を決めて見せに来てくれ。」
先生にそう言われ、美術部員はぞろぞろと体育館に向かう。
体育館では新体操部が厳しい練習をしていた。ていうか人間業じゃねぇよなぁ。いろいろ。
構図を考えながらもヨッシーの頼みの所為か、鈴木七実にばかり目がいく。彼女が踊る(で、いいのか?新体操って)姿は確かにキレイだ。
雑念が入った所為か、構図が決まって下書きを始める頃には下校時刻になっていた。


急いで荷物をまとめ、靴箱に向かう。やたら広い靴箱に着いた瞬間、人影が見えた。
それは、例の名前もわからない彼女だった。
「あ…あの!」
咄嗟に声をかけたはいいものの、名前もわからないのだからどう続けて良いのか…。
悩んでいると彼女は不思議そうにこちらを見ていたが、僕のカバンに目をとめた。
「もしかして、美術部の人?」
その言葉を全力で肯定する。
「美術部で、一年三組の、竹田。」
「竹田くん?川の絵を描いた人?」
彼女が尋ねてくる。
「体育館にあったやつ。」
頷いた。彼女が少し笑う。
「あれ、すごく綺麗だった。」
「あ、ありがとう。」
絵画越しとはいえ彼女が自分を認識してくれていたことにどぎまぎする。
「君は…器楽部、だよね?」
頷く。
「器楽部一年八組の、鈴木。」
「鈴木?」
思わず聞き返した僕に彼女は困ったように笑った。
「よくある名字だけど。学年に六人いるし。」
「あ、確か『竹田』も三人くらいいるよ。」
自分がこの会話をどう持って行きたいのかがわからない。
「えと…今、帰り?」
「うん。」
誰がどう見てもそうだろ、と自分に突っ込みをいれる。勿論、心の中で。
「途中まで、一緒に帰らない?」
自分で言うのもなんだが、よくそんな言葉が口から出て来たなぁと感心する。今まで女子と二人きりで歩いたことなんて多分ないぞ。
「…うん。いいけど。」
彼女は躊躇いがちに、でもはっきり頷いた。心の底からほっとした。


「家、どの辺?」
暗くなってきた道を歩きながら、俺は自然な会話を模索した。
「月見が丘。」
「月見が丘?高級住宅街だっけ?」
確か古くてでっかい家が並んでるとこだよな。
「そうでもないよ。ただ古い街並みなだけ。」
よく言われているかのようにそう答えた。実際、こんな問答はしょっちゅうなのかもしれない。
「…竹田くんは?」
「白鳥駅の近く。電車は乗らないけど。」
「じゃ、天川駅までは同じ道かな。」
「多分。」
初めて彼女を見たのも、白鳥に向かう途中だったし。
「あの…さ。」
「?」
「鈴木さんは…バイオリンやってるの?」
「そう、だけど。」
「ずっと?」
「ううん、高校入って始めたばっかり。」
「その前は…何か、やってた?」
俺の質問に、彼女はきょとんとした。
「なんでそんな事聞くの?」
「え?あ、いや別に…」
失言だったかな。なにかバイオリンに移動しなきゃいけない辛い理由があったのかもしれない…ってだからなんで俺は彼女が別の楽器をやってたと思い込んでるんだ?
「…竹田くんは、昔からお絵描きとかやってた?」
「ああ、うん。」
習い事は、習字と絵画だった。我ながら文系だ。
駅が見えてきた。別れ道がすぐ近くに迫っている。俺は、どうしても聞かなければいけない質問を口にする。
「あのさ…下の名前、なんていうの?」
鈴木さんは「言ってなかった」と呟いてからから答えた。
「夕花。夕方の花って書いて、ゆうか。…竹田くんは?」
「春彦。春生まれだから。」
「…そっか。わかりやすいね。」
別れ道に辿り着く。
「えと、ありがとうございました。」
口から出た言葉に鈴木夕花が首を傾げる。
「…何が?」
「…さあ?一緒に帰ってくれて、かな?」
「…変なの。じゃあね。」
そういうと鈴木夕花は駅の改札へと歩いていく。俺はここからまだ徒歩だ。電車賃節約。
「ゆうちゃん、だっけな…。」
呟いてから、俺は携帯を開いた。

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